災害に遭い心が弱ったときこそ、甘いもの
非常時はまず「命をつなぐため」の水、そしておにぎりやパンなどの食料が優先されますが、じつはこうした栄養に加え甘いものを口にすることが心の安定にもつながることがわかってきました。
災害に遭いパニックになったとき、甘い食べものを口にすることで、強いストレスを感じている心を落ち着かせ、リラックスさせる。
これは「幸せホルモン」ともいわれるエンドルフィンやセロトニンを脳内に分泌させる糖分の働きで、こうした効果から非常食のアイテムに甘いお菓子やキャンデーを加える人も増えています。
最近はケーキの缶詰なども出てきて長期保存できる甘味も増えましたが、もっとも身近な保存食として再び注目されているのが砂糖です。
砂糖は保存できる期間が長く即効性のエネルギー源という利点から、古くから備蓄食料として保存されてきました。
カンパンのおともは、なぜ氷砂糖?
砂糖のなかでも、いざ、というとき口に含んでなめているうちに、脳と身体に栄養がゆきわたるのが氷砂糖です。氷砂糖はグラニュ糖の結晶を大きくしたもので、水分とのなじみが良く、ゆっくり溶ける特徴から一般には梅酒などを漬けるときに使われます。
以前のコラム「砂糖の賞味期限」でご紹介したように砂糖に賞味期限はありません。
氷砂糖も密封して湿気にさらさない状態ならば半永久的な保存も可能です。
非常食の定番「カンパン」に氷砂糖や金平糖の粒が入っているのを見たことがありますか?
この氷砂糖には理由があり、ひとつには糖分補給のため、そしてもうひとつは口に含んでゆっくり溶かすことで唾液の分泌を促し、水分の少ないカンパンを食べやすくするためのものだったのです。
軍用食として始まったカンパンは日本人の口になじむよう何年もかけて改良され、カンパンの中に金平糖や氷砂糖が入れられるようになったのは、1931年頃のこと。
この画期的な組み合わせは今も続き、いつでもどこでも食べられるカンパンは非常食の定番としてさまざまな場所で備蓄されています。
砂糖が生んだ伝統的な保存食
スポーツ選手や登山家が携行食としてひと口サイズの羊羹を持ち歩くことも知られていますが、この伝統的な日本のお菓子もまた、優秀な保存食。
羊羹の材料は主に砂糖、小豆、水飴、寒天などでアレルゲン物質にもなる乳製品や卵は含まれていません。柔らかく口当たりもよく、お子さんからお年寄りまで食べやすいのです。
保存や携行もしやすく機能的な日本の伝統食は、警視庁災害対策課のツイッターでも非常食としてすすめられています。
身近な非常食に氷砂糖や羊羹などを加えてみませんか?