異性化糖 ~トウモロコシやイモから作る糖~

2020.11.25 知識情報

異性化糖 ~トウモロコシやイモから作る糖~

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砂糖はサトウキビやテンサイから作られていますが、トウモロコシやイモから作られる糖があることを知っていますか?

「オリゴ糖ってなんだろう?」のコラムで、ごはんやイモに含まれる「でんぷん」が「多糖類」という糖の仲間であることをお話ししましたが、トウモロコシやイモのでんぷんを原料に作られるのが、「異性化糖」です。


でんぷんを分解すると

でんぷんは、たくさんのブドウ糖が結合したものです。このでんぷんに酵素と水を加えると、でんぷんの分子が不規則に分解されて小さくなります(液化)。
そして、また別の酵素を加えて分解することで、今度はブドウ糖になります(糖化)。
こうして酵素の力ででんぷんはブドウ糖になりますが、ブドウ糖は砂糖の7割ほどの甘味しかありません。
そのため、砂糖に近い甘さになるように、さらに別の酵素を加えてブドウ糖の一部を砂糖より甘味の強い果糖に変えます(異性化)。

このプロセスを経て「多糖類」の「でんぷん」は「異性化糖」になります。「異性化」とは聞き慣れない言葉ですが、ある分子について、原子の数や種類は変えずに配列など結合状態を変えることです。

異性化糖の作り方.jpg



異性化糖には、砂糖の成分であるショ糖と同様にブドウ糖と果糖の分子が含まれていますが、砂糖がブドウ糖と果糖の分子1つずつが結合されているのに対し、異性化糖はブドウ糖と果糖の分子は結合しておらず混ざりあっているだけです。

砂糖と異性化糖の違い.jpg



異性化糖は、何に使われている?

「トウモロコシやイモから作られた糖なんて見たことがない」と思う方もいるかもしれません。しかし異性化糖は、じつは私たちの暮らしに身近な糖です。

異性化糖は、そのほとんどが食品メーカー向けに製造されており、甘味料として飲料や調味料、パンなどさまざまな食品に使われています。
異性化糖そのものは商品としてスーパーなどでの小売販売がほぼないことから消費者の方にはなじみが薄いのですが、食品ラベルの原材料の欄に「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ糖果糖液糖」といった表記を見かけたことはありませんか?
これらはどちらも異性化糖のことで、JAS(日本農林規格)によって下記のように名称が定められています。

・果糖含有率50%未満→「ブドウ糖果糖液糖」
・果糖含有率50%以上90%未満→「果糖ブドウ糖液糖」
・果糖含有率90%以上→「高果糖液糖」

異性化糖の特徴は、砂糖よりも爽やかでキレのある甘味です。果糖の割合が多いほど甘味も強いのですが、甘味は温度によっても左右され、果糖は冷たいほうが甘味を強く感じます。
このため、清涼飲料水や冷菓には果糖ブドウ糖液糖がよく使われています。

異性化糖は液体ですが、高濃度でも結晶化しにくく粘りも少ないので、扱いやすい点や、大量での運送や保存が可能な点も、飲料や加工食品によく使われる理由でしょう。

異性化糖1.jpg