漬物には砂糖が使われる!?
漬物は野菜の保存性を高める方法として古くから日本で親しまれてきました。カレーを食べる時、福神漬けや甘酢らっきょうを付け合わせにする方も多いと思います。
これらの漬物には砂糖が入っているので甘い味になりますが、砂糖が調味液に使われるメリットは、味以外にもあるのでしょうか。
漬物づくりにかかせない「浸透圧」
じつは、調味液に砂糖が多く使われることによって、より味が染み込みやすくなります。
これには、浸透圧という水分の移動が関係しています。
浸透圧とは、2つの濃度が異なる液体が半透膜(水は通しますが、水に溶けている砂糖などの分子は通さない膜)を介して隣り合った時に、濃度を一定に保とうとして水分が濃度の薄い側から濃い側に移動する圧力のことです。
砂糖の力で野菜の水分をいったん外へ
漬物に使われる野菜の細胞には細胞膜という半透膜があり、調味液に野菜を漬けると、細胞内外の濃度を一定に保とうとするため水が細胞の外(濃度の濃い調味液側)にたくさん移動します。
調味液に砂糖を加えると調味液の濃度を高められるので、浸透圧が生じやすくなります。野菜から水分が出ると野菜の細胞膜の構造が変わり、半透膜としての機能がなくなって調味液が野菜に染み込み、おいしい漬物になります。
梅酒に氷砂糖が使われる理由
梅酒は、6月頃に収穫される青梅を、蒸留酒(ホワイトリカー、焼酎、ブランデーなど)と氷砂糖に漬け込んで作られる(下図①)アルコール飲料です。
なぜ梅酒を作る時に、上白糖やグラニュ糖ではなく氷砂糖を使うのでしょうか。
じつは、氷砂糖の「溶けにくさ」を利用しているのです。
梅酒を作りたての時は、外液よりも実のエキスが濃いため、梅の実に水分とアルコールが移動します(②)。そして時間が経つと、砂糖のかたまりである氷砂糖から少しずつ砂糖が溶け出し、梅の実よりも外液の方が糖の濃度が高くなるので、徐々に梅の実から水分とアルコールが出ていきます(③)。
この水分とアルコールに梅の風味が移っているので、コクのあるおいしい梅酒になります(④)。
上白糖だとどうなる?
もし氷砂糖がない場合、上白糖やグラニュ糖で代用できるのでしょうか? 上白糖やグラニュ糖はすぐに溶けるので、はじめから梅の実よりも外液の濃度が高くなります。
すると、梅の実から急激に水分が出て収縮し、梅の風味がしっかりと出なくなってしまいます。氷砂糖を使って、外液の濃度をじわじわと上げていくことがおいしさのポイントになります。
浸透圧のしくみを漬物や梅酒作りに活かしてみましょう。
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