「ビート」から「テンサイ」誕生へ
サトウキビとともに砂糖の原材料として知られるテンサイは、もともとは「ビート」という植物です。
ビートの歴史は古く、紀元前からシチリア島を中心にギリシャ人やローマ人によって栽培されたと言われています。やがて地中海沿岸、アジアへと広まり、さまざまな栽培品種が生まれました。
日本では、江戸時代頃から「フダンソウ」という名前で知られ、葉を食べるために栽培されていました。
現在では、葉を食べるビートとしては「スイスチャード」が有名です。葉の軸が赤や黄色とカラフルで、サラダに使われることが多い野菜です。
一方、ビートの根もヨーロッパでは中世から料理法が記録されており、現在は「テーブルビート」や「ビーツ」と呼ばれるものが根を食べる品種として知られています。ビーツは、ロシアの煮込み料理「ボルシチ」でおなじみですね。
このようなビートの栽培品種のひとつとしてテンサイが誕生したのは、18世紀のこと。
ドイツの化学者がビートの根から砂糖の成分であるショ糖を抽出したことがきっかけでした。それから砂糖の原料として使用するために品種改良が行われ、現在のテンサイがあります。
テンサイの「輪作」とは?
テンサイは、ヒユ科アカザ亜科フダンソウ属。ヒユ科というと聞き慣れないかもしれませんが、ホウレンソウの仲間で、テンサイも育つとホウレンソウのような葉っぱが生えます。
生育には涼しい地域が向いているため、日本では北海道で栽培されています。
春に植え付け、秋に収穫を行いますが、その栽培方法として欠かせないのが「輪作」です。輪作とは、連作(毎年同じ土地に同じ作物を作ること)による収穫量や品質の低下を防ぐため、同じ土地に異なる作物を交代で栽培すること。
テンサイは根がよく張り、後の作物の生育がよくなることから、小麦やじゃがいも、豆とともに輪作され、これらと並ぶ北海道の代表的な作物になっています。
収穫したテンサイは
テンサイは、根からショ糖を抽出するので、収穫時には葉を切り落とします。根は短い大根のような逆円錐形で、太い部分の直径は10~15㎝、重さは500g~1㎏ほどです。
サトウキビは茎をしぼって甘い汁を取りますが、テンサイは根をしぼるのではなく、きざんで湯に浸し、糖分を湯にしみ出させます。
テンサイ1㎏からとれる砂糖は約160gですから、大きめのテンサイならサトウキビ1本より多い砂糖がとれることに。
1㎏入りの上白糖は、およそ6㎏のテンサイからできあがります。
切り落とした葉はアクが強いので、残念ながら食べるのには向きません。ショ糖を抽出した後の繊維分と一緒に乾燥し、「ビートパルプ」と呼ばれ主に牛の飼料として利用されています。
また、食物繊維が豊富なため、粉末状にした「ビートファイバー」を食品に利用する取り組みも見られ、サトウキビと同様にテンサイも環境にやさしい素材と言えるでしょう。
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