乳糖果糖オリゴ糖がどんなものかをご紹介するシリーズの11回目。今回は難消化性の糖質の大量摂取によって起こることが懸念される一過性の下痢について、乳糖果糖オリゴ糖でのヒト試験をご紹介いたします。
腸内環境を整えることのメリットはいくつもあり、オリゴ糖についてさまざまな研究が行われています。排便回数の増加や免疫機能の改善、また、花粉症や睡眠への影響などの研究もあります。
そのような中で今回は三国克彦らが行った乳糖果糖オリゴ糖が一過性の下痢を起こしにくい性質を持つことを明らかにしたヒト試験を簡単にご紹介します。
難消化性の糖質は消化吸収されずそのまま大腸内に到達するため、多く摂取すると大腸内の浸透圧が高くなります。浸透圧をさげるため体内から大腸内へ水分が出てきて、一過性の下痢を起こしやすいことが知られています。
乳糖果糖オリゴ糖も難消化性の糖質のため、同様の現象が起こりえます。そこで、どのくらいの摂取量なら起こりうるのかヒト試験が行われました。
・被験者:健常な10~30歳代の成人男女84名。
・試験試料の摂取:被験者の体重当たり、以下の①から④の量の乳糖果糖オリゴ糖を摂取し試験しました。各回の試験は最低3日間の間隔をあけて行っています。
① 0.2g /体重kg ...( 体重60kgの人で乳糖果糖オリゴ糖12g )
② 0.4g /体重kg ...( 〃 24g )
③ 0.6g /体重kg ...( 〃 36g )
④ 0.8g /体重kg ...( 〃 48g )
・調査方法: 摂取時及び摂取後の体調と排便の状態を該当する状態(※)に印をつける方法で調査。水様状の便が下痢の基準となります。
※ 便の状態 : (a) カチカチ状
(b) バナナ状
(c) 半練状
(d) 泥水状
(e) 水様状
・試験結果:
① 0.2g /体重kg ...(体重60kgの人で乳糖果糖オリゴ糖12g):
→ 全員に下痢の発生は認められませんでした。
② 0.4g /体重kg ...(体重60kgの人で乳糖果糖オリゴ糖24g):
→ 全員に下痢の発生は認められませんでした。
③ 0.6g /体重kg ...(体重60kgの人で乳糖果糖オリゴ糖36g):
→ 下痢が84名中1名に発生、発生率1.3%でした。
④ 0.8g /体重kg ...(体重60kgの人で乳糖果糖オリゴ糖48g):
→ 下痢が84名中22名に発生、発生率26.2%でした。
以上の結果から、乳糖果糖オリゴ糖の一過性下痢誘発に関する最大無作用量は、0.6g /体重kgに近い値であることが分かりました。
ちなみにフラクトオリゴ糖の最大無作用量は0.3~0.4g/体重kg(*1)との報告があります。それと比較して乳糖果糖オリゴ糖は多く食べても一過性の下痢を誘発しにくいオリゴ糖であると言えます。
乳糖果糖オリゴ糖を摂取する量を変えて試験した結果、体重(kg)当たり0.6gであれば、ほとんどの人が下痢にならないことが分かりました。
これは体重60kgの人で考えると36g (0.6g × 60kg) となり、市販されている「オリゴのおかげ」に換算すると、水分や原料由来の乳糖などの糖も含まれるため、製品で119gとなります。
「オリゴのおかげ」は1日当たり製品8~20gで腸内のビフィズス菌を増やす効果が分かっていますので、ここまで多く摂る人はいないかもしれませんが、一日に300g入りボトルの1/3以上、119gを食べてもほとんどの人が下痢をしない、安全性の高いオリゴ糖であることをこのヒト試験が明らかにしています。
(三国克彦ら,(1993)澱粉化学,40(1):p15-19)
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今回は「乳糖果糖オリゴ糖ってどんなもの?」シリーズの11回目、難消化性の糖質の大量摂取によって起こることが懸念される一過性の下痢について、乳糖果糖オリゴ糖でのヒト試験をご紹介いたしました。
これまでもさまざまなヒト試験を紹介してきました。ご興味があるものがありましたら、下のリンクからご覧ください。
【文献】
(*1):秦 葭哉、中島久美子、:「ネオシュガー摂取と胃腸症状との関係」, ネオシュガー研究報告, ネオシュガー研究会事務局, 東京, p.9 (1982)
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