乳糖果糖オリゴ糖ってどんなもの?⑨ ~ 花粉症の症状緩和 ヒト試験 ~

2024.09.23 知識情報

乳糖果糖オリゴ糖ってどんなもの?⑨ ~ 花粉症の症状緩和 ヒト試験 ~

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乳糖果糖オリゴ糖がどんなものかをご紹介するシリーズの9回目。今回は花粉症の症状緩和についてのヒト試験をご紹介いたします。



乳糖果糖オリゴ糖の摂取による花粉症の症状緩和 ヒト試験


腸内環境を整えることのメリットはいくつもあり、さまざまな研究が行われています。排便回数の増加や免疫機能の改善、また、ストレスの低減や睡眠への影響などの研究もあります。
そのような中で今回は定清剛らが行ったヒト試験の試験内容と結果を簡単にご紹介します。



花粉症の症状緩和に関するヒト試験のまとめ


・被験者:

花粉症の症状を持つ40名。
(半数が試験食、半数はプラセボ食


※ プラセボ食品とは、外観・味などを試験食品と同じにした有効成分を含まない食品。被験者に自分が摂っているのが、試験食品かプラセボ食品か分からないようにして試験されます。


・試験期間:

1月9日から6月4日までの21週間。
最初の1週間と最後の2週間は無摂取期間に設定、2週目から19週目までの18週間に乳糖果糖オリゴ糖を摂取。
(このときの試験地域でのスギ花粉の飛散は2月9日からで、花粉飛散の約3週間前から乳糖果糖オリゴ糖を摂取していたこととなりました)


・試験方法:

摂取期間に乳糖果糖オリゴ糖を3g含む水飴を毎日摂取。
毎日、被験者自身により5段階(一部、4段階)で症状を記録。その記録を有意水準5%にて統計解析を行いました。
記録項目は「鼻の症状」「目の症状」「薬の使用状況」「日常生活の支障度」。


・試験結果:

 ~鼻の症状~

[鼻閉]についてはプラセボ摂取群と比較して乳糖果糖オリゴ糖摂取群は5週目と8、10~13週目で有意に低下。
[鼻かみ]については同じく10週目で有意に低下。
[くしゃみ]については有意な差はなかった。


 ~目の症状~

[目のかゆみ]についてはプラセボ摂取群と比較して乳糖果糖オリゴ糖摂取群は多くの測定ポイントで低く、特に8週目で有意に低値となった。
[涙目]については有意な差はなかった。


 ~日常生活の支障度~

乳糖果糖オリゴ糖摂取群はプラセボ摂取群と比較して摂取期間を通じて低値で推移し、特に5、7、9及び、11週目で有意な差が認められた。



・ヒト試験の結果からの考察:


スギ花粉飛散の3週間前より乳糖果糖オリゴ糖を摂取していて、花粉飛散の頃には被験者の大腸内ではビフィズス菌が増えていたと考えられます。


また、ビフィズス菌などが増えて腸内環境が改善することは、これまでの研究(文献*1)によりアレルギー症状の緩和に寄与することが知られています。


これは、多くの研究(文献*2)によって示されているとおり、腸内環境の改善が腸管免疫系を活性化すること、また、腸管免疫系と全身免疫系の間には密接な相互作用があることの結果です。


これらのことから、乳糖果糖オリゴ糖の摂取によって腸内のビフィズス菌が増えて、腸内環境が改善したことで、鼻や喉など腸と直接関係のない場所での不快な花粉症の症状が軽減したと推測されます。


乳糖果糖オリゴ糖って9_挿入画像1_スギの木が花粉を出している画像



40名に対するヒト試験の結果、乳糖果糖オリゴ糖を事前に摂ったことによる腸内環境の改善が影響したと考えられ、薬のような即効的で絶対的な効果ではありませんが、花粉症のいくつかの症状が低減する結果となりました。


そして、調査項目の中でも「日常生活の支障度」において、プラセボ摂取群と比べて乳糖果糖オリゴ糖摂取群は摂取期間を通じて花粉症状の生活への支障度が低く、特に(スギ花粉)飛散ピーク時期に低かった結果となっています。
これは、乳糖果糖オリゴ糖による腸内環境の改善が、花粉症がひどくなる時期の生活の質を改善することを示しています。


(定清剛ら、「4G-β-D-Galactosylsucrose(ラクトスクロース)摂取による花粉症の症状緩和」(2018))


~~~~~~~~~~



今回は、「乳糖果糖オリゴ糖ってどんなもの?」シリーズの9回目、花粉症の症状緩和についてのヒト試験をご紹介いたしました。


これまでもさまざまなヒト試験を紹介してきました。ご興味があるものがありましたら、下のリンクからご覧ください。



【文献】


*1 上野川修一:プロバイオティクス,プロバイオティクスそして免疫 腸内細菌学雑誌,15,91-95(2002)


*2

T. Takahashi, E. Nakagawa, T. Nara, T. Yajima, and T. Kuwata: Effects of orally ingested Bifidobacterium longum on the mucosa] lgA response of mice to dietary antigens. Biosci. Biotechol. Biochem., 62, 10-15 (1998).


E.J. Ko,, J.S. Goh, B.J. Lee, S.H. Choi, and P.H. Kim: Bifidobacterium bifidum exhibits a lipopolysaccharide-like motogenic activity for rnurine B lymphocytes. J. Daily Sci., 82, 1869- 1876 (1999).


T. Matsuzaki, R. Yamazaki, S. Hashimoto, and T. Yokokura: The effects of oral feeding of Lactobaci11us casei strain Shirota on immunoglobulin E production in mice. J. Dairy Sci., 81, 48-53 (1998).


K. Shida, K. Makino, A. Morishita, K. Takamizawa, S. Hachimura, A. Ametani, T. Sato, Y. Kumagai, S. Habu. and S. Kaminogawa: Lactobacillus casei inhibits antigen-induced lgE secretion through regulation of cytokine production in murine splenocyte cultures. Int. Arch. Allergy immunol., 115, 278-287 (1998).


S. Murosaki, Y. Yamamoto, K. Ito, T. lnokuchi, H. Kusaka, H. Ikeda, and Y. Yoshikai: Heat-killed Lactobacillus plantarum L-137 suppresses naturally fed antigen-specific lgE production by stimulation of IL-12 production in mice. J. Allergy Clin. Immunol., 102, 57-64 (I 998).



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