これまで、この「知る・楽しむ」コーナーで砂糖(ショ糖)のはたらきをそれぞれご紹介してきました。砂糖は甘さの他にも高い親水性やその他の性質によって食品を美味しくする効果がさまざまにあります。
それら砂糖のはたらきを味や香り、食感など美味しさの要素ごとにまとめました。前編の今回は「味」「色」「香り」へのはたらきです。
・「甘み」
砂糖を加えると食べ物が「甘く」なると、何気なく思うかもしれません。
しかしじつは、砂糖の甘味は少し特殊です。食品を甘くする「糖」は自然界にも、人工的に作られたものもいろいろあります。この「知る・楽しむ」コーナーでもブドウ糖やソルビトール、ステビア甘味料などたくさんの糖を紹介してきました。
それらの中で砂糖(ショ糖)の甘みは、ヒトにとって一番自然な甘さをしています。ヒトなど生物にとって、生命維持のエネルギーとなる基本の糖はブドウ糖ですが、ブドウ糖をそのまま食べるとさっぱりしすぎて、物足りなく感じます。母乳に含まれ、赤ちゃんに必要といわれる乳糖はあまり甘さを感じません。
それらに引きかえ砂糖は、そのままキャンディにして食べてもさっぱりしつつも適度のコクで美味しく、料理に使っても素材の味を邪魔せず、濃くても薄くてもシンプルに甘さを加えられ、また食べるときの温度の影響も少ないなど、糖の中で唯一無二の美味しい甘みをしています。
詳しくはこちらの記事(「砂糖の甘味の特徴」)を見てくださいね。
・「味の抑制効果」
コーヒーなど苦い飲み物や、グレープフルーツなど酸っぱい食べ物に砂糖を加えると甘味が加わるだけではなく、苦味、酸味がマイルドになります。これは味の抑制効果といい、甘味と苦味など違う2種類の味のうち、片側が弱く感じられるようになる作用です。
強い苦味や酸味が減って食品の風味・美味しさを感じやすくなります。
チョコレートの美味しさも強い苦味が抑えられることで生まれています。
詳しくはこちら(「砂糖による味の抑制効果をご存じですか?~味の相互作用~」)
・「浸透圧」により果実や野菜などから水分と一緒に素材の風味を引き出します。
これは砂糖が水にたくさん溶ける性質を利用して高い濃度の砂糖液を作り、そこに果物などを漬けることで果物の水分が外に出てくることで起こります。
梅酒などがこの作用により作られます。
詳しくはこちら(「漬物や梅酒をおいしくする 浸透圧と砂糖の関係」)
・「カラメル化」
水に溶かして加熱することで砂糖は独特の風味をもつカラメルになります。プリンにカラメルソースを添えることで甘味にかすかな苦味と複雑な風味が加わり、奥深い美味しさになります。
三温糖もカラメル化によって独特のコクのある甘味が生まれています。
詳しくはこちら(「クッキーやパンのおいしさの秘密カラメル化とメイラード反応」)
このカラメル化は砂糖を高温で熱すると褐色の物質、カラメルができることです。つづいては食品の「色」へのはたらきです。
・「カラメル化」
砂糖などの糖類を加熱して作られる「カラメル色素」は食品に最も使われている着色料です。コーラ飲料の色もカラメル色素によるものです。
※カラメル色素には砂糖などの糖類だけを加熱して作られるものの他に、アンモニウム化合物などを加えて作られるものもあります。
詳しくはこちら(「三温糖とカラメル ~三温糖は色を付けているの?~」)
・「メイラード反応」
砂糖などの糖とタンパク質のアミノ酸を一緒に加熱するとメイラード反応により、食品に美味しそうな「焼き色」がつきます。
詳しくはこちら(「クッキーやパンのおいしさの秘密カラメル化とメイラード反応」)
・「メイラード反応」
また「メイラード反応」は、食欲をそそる「香り」物質も作り出します。小麦粉はそのままでは白く、香りはしませんが、砂糖と合わせて焼くことでクッキーやパンのように「香ばしい香り」がしてきます。
詳しくはこちら(「クッキーやパンのおいしさの秘密カラメル化とメイラード反応」)
今回の「食品のおいしさへの砂糖のはたらき(前編)」では砂糖による「味」「色」「香り」へのはたらきをまとめました。
次回は、砂糖を入れることでぷるぷるしたり、ふわふわしたり、「食感」を良くするはたらきをまとめます。
次回もみてくださいね。
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