マシュマロは泡立てた卵白に溶かしたゼラチンを混ぜて、ふわふわに柔らかく固めた甘いお菓子です。
口に入れると心地よい弾力と同時に、体温で優しく溶けていき、他にはあまりない不思議な食感のスイーツです。
香料や色素を加え、可愛くアレンジされているものも多くあります。
砂糖が入っていて甘いのですが、じつは、卵白を泡立てる時もふわふわに柔らかく固める時も、砂糖には甘み以外の重要な役割が与えられていました。
卵白を泡立てると空気が気泡となって混ざっていきます。
しかし卵白だけで泡立てると気泡が大きくなりやすく、また、時間とともに気泡の膜から水分が離れていき、気泡が壊れやすくなります。
この泡立てる時に、砂糖を少量ずつ加えながら混ぜると劇的に泡立ちが変わります。
砂糖が卵白に混ざることで気泡が大きくなるのを防ぎ、細かく揃っていきます。このとき砂糖を最初から全て入れると泡立ちにくくなりますので、3回程度に分けて入れるのがベストです。
また、砂糖が水分を抱え込み離水を抑えるため気泡が壊れにくくなり、安定性も増します。
※ この卵白を泡立てたものをメレンゲといいますが、メレンゲを作る過程における砂糖の役割は過去のコラム「砂糖の力でメレンゲの泡立ちをキープ」も下のリンクから見てくださいね。もう少し詳しく説明しています。
ゼラチンは液体をゲル状(ゼリー状)に固める性質がある物質です。ゼリーがゼラチンで作られるというと分かりやすいかもしれません。
ゼラチンは牛などの骨や皮に含まれるタンパク質のコラーゲンが原料で、水に入れて50~60℃に加熱して溶かし、固めるものに混ぜて使います。
混ぜた後に冷蔵庫などで15~20℃に冷やすことで、ツヤと弾力をもってなめらかに固まります。
マシュマロは溶かしたゼラチンを泡立てた卵白(メレンゲ)に混ぜて冷やすと、細かな気泡ごとゲル状に固まりできあがります。
このとき、無数にある気泡とゼラチンの弾力によって、ふわふわとしたマシュマロの食感がつくられますが、ゼラチンの弾力は砂糖を混ぜると高まるのです。
メレンゲを形作っている細かい気泡の薄い膜をゲル状に固めるのに砂糖による弾力の強化が効果を発揮して、あの独特の食感を作り出しています。
今回はマシュマロ作りにおいて、卵白をキメ細かく泡立てる時と、その泡をゼラチンが弾力をもって固める時の両方で砂糖がひそかに重要な役割を担っていることをご紹介しました。
シンプルに白いものからファンシーに淡く色付けされたもの、かわいい動物の形になっているものなど、さまざまなマシュマロがあります。
今度ぜひ、口に入れると体温で優しく溶けていくマシュマロを召し上がって、ひととき優しい気持ちの憩いの時をすごされてみてはいかがでしょうか。
また、市販されているマシュマロには今回の材料を使わないものも多くあります。
卵白を使わず大豆タンパクを使うものや、ゼラチン以外のゲル化剤を使うもの、砂糖の一部を水飴に置き換えているものなどもあります。
【参考文献・資料】
・『サイエンススイーツ』太田さちか著(マイルスタッフ)
・『砂糖百科』橋本仁 他 監修(糖業協会)
・『マギーキッチンサイエンス』 Harold McGee著(共立出版)
・『調理事典』河野友美著(医歯薬出版)
【関連記事】