牛乳などの乳製品を主原料に、卵や砂糖、香料などを混ぜて、攪拌しながら凍らせたお菓子です。
しかし、ただのミルク味の氷菓子ではありません。アイスクリームがアイスクリームたる美味しさには3つの理由がありました。
それは「法律」と「攪拌」、そして「砂糖などの甘味料」です。
「牛乳」などの乳製品は、内容成分の規格が国により定められています。
牛乳であれば、乳脂肪分は3.0%以上で無脂乳固形分が8.0%以上、などと決まっていて、規格を満たさないものは牛乳と呼べません。
同じように「アイスクリームと呼べる規格」も決まっているのです。
乳固形分 | うち乳脂肪分 | ||
---|---|---|---|
アイスクリーム | 15.0%以上 | 8.0%以上 | |
(参考) | 乳脂肪分 | 無脂乳固形分 | |
牛乳 | 3.0%以上 | 8.0%以上 | |
無脂肪牛乳 | 0.5%未満 | 8.0%以上 | |
クリーム | 18.0%以上 | ||
バター | 80.0%以上 |
まろやかさ、美味しさのひとつの要素である脂肪分が牛乳の3倍近くあるものしかアイスクリームと呼べません。
ちなみに同じ材料を使って乳脂肪分が8.0%に満たないものはどうなるのでしょうか。
以下のように区分けして呼ばれます。
乳固形分 | うち乳脂肪分 | ||
---|---|---|---|
15.0%以上 | 8.0%以上 | → | アイスクリーム |
10.0%以上 | 3.0%以上 | → | アイスミルク |
3.0%以上 | - | → | ラクトアイス |
- | ー | → | 氷菓 |
このようにアイスの中でも「アイスクリーム」と呼ばれるものは乳固形分、乳脂肪分が高いものだけと法律で品質が守られているのです。
※この規格を決めているのは正確には「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(通称:乳等省令)という厚生労働省の省令です。
アイスクリームは材料を混ぜた後、攪拌しながら冷却して凍らせます。この攪拌によって空気が小さな気泡となって中に混ざりながら凍っていきます。
熱伝導率の低い空気が気泡となって均一に含まれることで、アイスクリームを口に入れたとき、氷の固まりを口に入れたときに比べて、冷たさをそれほど感じず、ミルクなど素材の風味が感じられるようになるのです。
口あたりもよくなり、スプーンですくうときの柔らかさにも影響します。
(なお、冷たさを感じにくくする作用は、含まれている脂肪分にもあります)
また、攪拌することで材料が大きな結晶となって凍るのを防ぎ、ごくごく小さな結晶が集まった形で凍っていきます。
この結晶が小さく均一であることで、なめらかな口どけになります。
攪拌もアイスクリームの美味しさには重要なポイントなのです。
すでに枕草子の時代には、貴族など高貴な人々は夏の暑い時期に甘みを付けたかき氷を非常に珍しい楽しみとして食べていました。
甘みは楽しみであり、美味しさのもとですが、アイスクリームの美味しさには、砂糖が甘み以外の効果も与えています。
それは、砂糖のもつ凝固点降下作用といわれる、凍り始める温度の低下効果です。通常、水は「0度」で凍り始めますが、砂糖を入れることで「0度」では凍らなくなります。
そのためアイスクリームの中には未凍結の部分が残っているのです。それは全体の10%にも満たない量ですが、その未凍結の部分と攪拌による微細な氷の部分、そして気泡などが均一に混じっている状態でアイスクリームはできています。
このそれぞれが均一に混じった状態がアイスクリームの柔らかさや口に入れたときのなめらかさ、風味の広がりなど、美味しさの決め手になっているのです。
* * * * *
なお、凝固点降下は水に何か物質が溶けていることで凍り始める温度が下がる現象で、食品では「塩」がその作用が高く有名です。
また、砂糖よりブドウ糖や果糖といった単糖の方がこの作用が高いため、それらが混ざってできている甘味料の異性化糖を使って、アイスクリームの柔らかさを調整することも行われています。
今回はアイスクリームの美味しさの理由をご紹介しました。
今度ぜひ、乳脂肪分たっぷり、砂糖たっぷりのアイスクリームで幸せ時間をすごされてみてはいかがでしょうか。
【参考文献・資料】
・『最近のアイスクリーム事情』((独)農畜産業振興機構 HP)
・『アイスクリームと砂糖』((独)農畜産業振興機構 HP)
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