でんぷんから作られる糖、麦芽糖をご存知ですか?
発芽した大麦が作る酵素「βアミラーゼ」がでんぷんを甘い糖に変えます。焼き芋の美味しさも麦芽糖が決め手でした。今回は麦芽糖をご紹介します。
水飴の甘みの主な成分として知られている糖です。
「ブドウ糖」が2個つながった分子構造をしていて、食べると小腸で分解されてブドウ糖となって吸収されます。
カロリーは約4kcal/gです。
甘さは砂糖の約1/3ですが、味質が砂糖に比較的近く、自然な甘みをしています。
作るときに、芽を出した大麦を使うことから「麦芽糖」と名前がつけられました。学名はマルトースと言います。
でんぷんはブドウ糖が数千個つながってできていますが、そのブドウ糖のつながりを麦芽に含まれる酵素で2個ずつに切ることで、麦芽糖は作られます。
詳しく説明すると、大麦の実は発芽するとき、でんぷんを分解する酵素を出して、自身の実に含まれるでんぷんを糖に変え、その糖のエネルギーで芽を伸ばします。
その酵素を出している発芽中の大麦を、コメやイモと一緒にすることで、コメやイモのでんぷんが大麦の酵素により分解され、麦芽糖になっていくのです。この時、分解が進みやすくするためにコメやイモは水を加え加熱して柔らかくしておきます。
この発芽した大麦が出す酵素は「βアミラーゼ」と言いますが、でんぷんを構成する、長くつながっているブドウ糖を、2個ずつに切る性質(反応特異性)があります。
※酵素について詳しくは文末のリンクから過去のコラム「酵素って何?」をご参考に。酵素ごとに特定の物質を特定の物質に変える性質があることを説明しています。
実際は、1個のブドウ糖分子にまで切れてしまうものや、数個から数十個以上つながったままのものも残りますので、純粋な麦芽糖をつくるにはそこから精製して他の糖を取り除きます。
ちなみに、この酵素を使って、もち米などから作られる「水飴(酵素糖化型)」では成分中に麦芽糖が一番多く38.5%、ブドウ糖が2.5%、他はその他の糖と水分となっています。(「日本食品標準成分表 八訂(文部科学省)」より)
また、麦芽の代わりに酸を使ってブドウ糖のつながりを切る作り方もあります。
サツマイモは「焼き芋」にすることで甘いスイーツに生まれ変わります。これはなんと、焼いている間に麦芽糖が生まれるためでした。
生のサツマイモはそれほど甘くありません。
加熱することで、でんぷんがまず糊化して柔らかくなります。そこに、もともとサツマイモに含まれている酵素「βアミラーゼ」が反応して、でんぷんが麦芽糖に変わっていくのです。
酵素「βアミラーゼ」は高い温度では働かず、麦芽糖ができるのは70℃近辺と考えられています。そのため、電子レンジなどで一気に加熱するより、焼いた石からの放射熱などでじっくり加熱する方が、麦芽糖が多く生じて甘い「焼き芋」になります。
石焼き芋の美味しさには理由があったのですね。
今回は麦芽糖をご紹介しました。
すでに奈良時代には日本で食べられていた水飴の甘み、麦芽糖。今度ぜひ、焼いている途中で甘さが増す不思議さを感じながら石焼き芋を召し上がってみてはいかがでしょうか。
なお、焼き芋の甘みは麦芽糖の他に、収穫後の貯蔵期間で生まれるショ糖も大きく関係しています。
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