和菓子を代表する「お饅頭」。もとは点心として700年ほど前に中国から入ってきたものですが、独自に進化して餡を生地で包むさまざまなお菓子の元となりました。
今回は前編として2種類の「お饅頭」をご紹介します。
小麦粉や米粉の生地で餡を包み、蒸してつくる和菓子です。
点心つまり間食のための料理の一つとして中国から鎌倉時代の日本に禅僧の往来とともに入ってきました。
当時、包まれる餡は肉や野菜が中心でしたが、僧侶が肉食を避けることもあり、塩味のあずき餡でつくられることが多かったようです。その後、砂糖の普及とともに和菓子として数限りない改良が加えられて、現代ではさまざまな種類の饅頭があります。
外側の「生地」の材料には、基本の小麦粉や米粉から、もち粉、そば粉や、くず粉などもあります。
色も白や紅、茶色や緑色、そして、くず粉のものは半透明です。
( くず饅頭 )
また内側の「餡」は生地以上に種類があります。
基本のあずき餡から白あん、うぐいす餡、味噌餡やミルク餡、栗が丸ごと入っているもの、水分が多めでしっとりしたものから乾燥していて干菓子のような餡もあります。
特に和菓子が庶民にも広く食べられるようになった江戸時代以降、競うようにして生地や餡に趣向がこらされて、種類が増えていきました。
また、明治時代になるとお菓子作りにオーブンが使われるようになり、蒸して作るのではなく栗まんじゅうのように、焼いて作られるものや、バターやミルクを使った洋風饅頭も人気となりました。
( 栗饅頭 )
このように「お饅頭」といってもいろいろありますが、ここでは最初の頃からあったといわれている、2種類の伝統的な饅頭をご紹介します。この2つから全ては始まったといっても過言ではありません。
ひとつ目は「酒饅頭(さかまんじゅう)」です。
生地の材料に「小麦粉」を使用し、「酒種(酵母菌※)」が生地を膨らませます。
※ お酒の醸造に使われる酵母です。酵母一般については過去のコラム「酵母ってなんだろう?」をご参考に。酵母が糖を食べて炭酸ガスとアルコールを発生させることを説明しています。
蒸しあがったあとも生地にかすかにお酒の香りが残って独特な風味があります。比較的生地がふっくらしているものが多いようです。
ちなみに酒種で生地を膨らませるこの方法は、後に「あんパン」が考案されたときにも使われます。あんパンも饅頭の仲間といってもいいかもしれませんね。
ふたつ目は「薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)」です。
こちらは材料にうるち米を細かい粉にした「薯蕷粉(じょうよこ)」を使い、山芋などのねばりのある「芋」をまぜます。
酵母やふくらし粉を使いませんが、蒸した後の生地はしっとり膨らみます。比較的生地が薄めで上品な物が多いです。
薯蕷饅頭が膨らむのは、生地に粘りがあるため蒸されると生地の中の水分が水蒸気となり生地の中に無数の気泡を作る、という仕組みによるものです。
その無数にできた気泡が小さな空間となったまま蒸しあがって固まるため生地が膨らむのです。
※ 西洋でもふくらし粉や酵母を使わずに、生地を膨らませるお菓子があります。フランスのシュークリームです。こちらはデンプンのアルファ化の技を使います。よければ過去のコラム「シュークリームのふくらみの秘密」をみて下さいね。
この2種類を紹介したのは、日本に入ってきた饅頭のはじまりに2説あり、この2種類の元になったものがそれぞれ最初に伝わった、となっているためです。
次回の後編では日本での饅頭のはじまりの物語をお伝えいたします。お楽しみに。
【参考文献・資料】
・『和菓子の歴史』青木直美 著(ちくま学芸文庫)
・『辞典 和菓子の世界』中山圭子著、(岩波書店)
・『江戸時代の砂糖食文化』(農畜産業振興機構HP)
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