三大栄養素であるタンパク質、脂質、糖質は、それぞれ生命維持に欠かせないエネルギー源として知られていますが、脳のエネルギー源は、糖質の一種であるブドウ糖です。

砂糖を食べるとブドウ糖となって身体をめぐります

砂糖（ショ糖）はブドウ糖と果糖の分子がつながった構造をしていますが、小腸でブドウ糖と果糖に分解されて体内に吸収されます。果糖も一部が肝臓でブドウ糖に変わり体内をめぐります。

そのブドウ糖はどのように脳のエネルギーになるのでしょうか。

脳のつくりから「ブドウ糖の脳での使われ方」を説明します

考えたり、手足を動かしたり、心臓や肺を動かしたり、脳は一日中活動しています。
24時間活動し続ける脳の細胞は、大きく「神経細胞（ニューロン）」と「グリア細胞」とに分けられます。そしてそこに「血管」が栄養を届けています。

それぞれの役割をみていきましょう。

血管　～ 脳内の特徴的な血管「脳血管関門」～

脳内へは、酸素やブドウ糖、ドコサヘキサエン酸(DHA)など脳に必要な物質のみが通れる「脳血管関門」という細動脈を通って栄養素が届けられます。
脳の血管は有害物質が脳内に入り込まないように関所のような役割ももっています。

そこを通って脳内に入った今回の主役「ブドウ糖」は血管の周囲に存在するグリア細胞と、神経細胞にとりこまれます。

神経細胞の活動を助ける「グリア細胞」

グリア細胞は神経細胞の10倍あるといわれていて、損傷した神経細胞の修復や除去をしたり、神経細胞間の伝達スピードを上げたり、シナプスに取り込まれなかった不要な神経伝達物質を取り除いたりするなど、神経細胞の活動をサポートしています。

なかでも「神経細胞の活動のエネルギー供給」も重要な役割です。

グリア細胞はブドウ糖を血管から受け取ると生物が使えるエネルギーを作り出す解糖系(※)と呼ばれる反応を行います。その過程でできた乳酸を神経細胞に渡し、神経細胞は乳酸をエネルギーとして神経伝達物質の放出などの活動を行います。

※「解糖系」とは、生き物がブドウ糖をエネルギーとして使うための一連の代謝過程のことで、ブドウ糖がピルビン酸や乳酸に変わっていく10ほどの代謝過程全般のことをいいます。

このときグリア細胞は神経細胞の働き具合をみながら必要量の乳酸を渡しています。
勉強するなどして、神経細胞が活発に活動してくると、血管の血流を増やし、血中から取り込むブドウ糖の量を増やして、たくさんの乳酸を作り神経細胞に供給します。

脳の「神経細胞（ニューロン）」

神経細胞は脳全体で1000億～1500億個あるといわれている、情報をやりとりすることに特化した特殊な細胞です。

神経細胞から神経細胞へシナプスという接合部で神経伝達物質を使って情報を伝えていき、運動や感覚、記憶や感情など人の活動のさまざまな機能をつかさどっています。

この神経細胞の活動のエネルギー源は、一つがグリア細胞からの乳酸です。また、直接ブドウ糖を取り込んで酸素も使い ATP（アデノシン三リン酸） というエネルギー分子を作り出して利用しています。

脳は、ブドウ糖から取り出したこれらのエネルギーを使い、一日中活発に活動していて、身体のなかでも特に多くのエネルギーを必要とする器官です。
重さでは体重の2～3％の脳が、全身の消費カロリーの約20％を使うと言われているほどです。

血糖値を一定にするしくみ

グリア細胞にも、筋肉などの細胞と同様にブドウ糖をグリコーゲンにして蓄える機能がありますが、多くは蓄えられません。
そのため、身体は血液中のブドウ糖濃度（＝血糖値）を一定にする仕組みがあります。

とても簡単に言うと、身体は食事をして血中にブドウ糖が新たに入ってきたとき、すぐに使わない分を肝臓や筋肉に蓄え、それでも多ければ脂肪に変えて蓄えます。逆に脳や全身の細胞がブドウ糖を使って血中のブドウ糖が減ってくると、蓄えていたものを血中に戻します。
（詳しくは以前のコラム『砂糖と身体　①砂糖を摂取すると、どうなる？』をご参考に）

このようにして脳に必要な量のブドウ糖を身体はいつでも血液中に満たしているのです。

今回は砂糖が脳のエネルギーになる仕組みをご説明しました。
バランスのいい食生活で身体も脳も、はつらつとした生活を送りたいですね。

【参考文献・資料】
・『脳とグリア細胞』工藤佳久著（技術評論社）
・『砂糖の知識　食育のためのお砂糖テキスト』公益社団法人全国学校栄養士協議会監修

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