クリスマスが近くなると、日本でもよく見かけるようになったシュトレン。今回はお酒とスパイスが香る、大人も楽しめるシュトレンのお話です。
(このお菓子は「シュトーレン」とも「シュトレン」とも呼ばれますが、ここでは元々のドイツ語発音に近いシュトレンにて進めます)
シュトレンとは、バターや牛乳、砂糖が入った小麦粉の生地を酵母で発酵させ、そこにナッツや洋酒漬けにしたドライフルーツ、マジパンなどを混ぜ込んで焼き、仕上げに粉砂糖を全体にまぶしたドイツ発祥の発酵菓子です。
クリスマスが近くなると、パン屋さんや洋菓子店で発売されるシュトレン。入れるフルーツなどの違いにより、お店ごとにオリジナリティーあふれる味わいがあります。
一説には、はじまりはドイツの修道院といわれています。クリスマス前の4週間はアドベントといわれるクリスマスを待つ宗教的に特別な期間で、祈りなどのほかに断食(※)をする期間でした。
※ このときの断食は食事量を減らしたり、禁止されている食材があったりするなどで全く食べないわけではありませんでした。
そんなアドベントの期間に修道院で特別のパンとして焼いて食べられていたものがシュトレンのもとになったといわれています。
1300年代にはすでに記録もあり、クリスマスに向けて大きな塊のパンを少しずつ切って食べていく、シュトレンとして食べられたようです。
断食期間でもあり、当初は素朴なパンだったようですが、1491年に断食期間の禁止食材のひとつ、バターの使用が教皇から許されるなど、段々と改良されていき、現在のようなクリスマスを迎えるための豪華なお菓子となっていきました。
ドイツではシュトレンを作ってから3~6週間ほど熟成させ、クリスマスにむけて少しずつカットして食べるのが伝統的な食べ方です。
日が経つにつれて洋酒に漬けたドライフルーツなどの味が生地になじみ、日に日にしっとりと味わい深く変化していくのが特徴的で、クリスマスへの期待感の高まりとともにある食べ物です。
食べるときは断面の乾燥をふせぐために、端からではなく真ん中を縦にスライスして取り出し、断面をあわせるようにしてクッキングシートなどに包み常温で保存します。
外側は砂糖が覆っているため乾燥とカビの発生が防がれ、生地にも砂糖が多めに使われていて細菌などの活動が抑えられ、日持ちします。
(砂糖のもつ防腐性につきましては過去のコラム「なぜジャムは長もちする? 砂糖の防腐性」を見てくださいね。食品の自由水について説明しています)
シュトレンを食べると食感がしっとりとしていませんか?
このしっとり感にはマジパンが一役買っています。マジパンとはアーモンドの粉末と砂糖、卵白を混ぜたもので、色をつけて花や動物などを形作り、ケーキにデコレーションされたりしています。
(マジパンで作られた花と葉の飾り)
シュトレンに使われるのは、アーモンド粉末を多めに配合したローマジパンというもので、シュトレンのほかに焼き菓子にも使われたりします。
(ローマジパン)
ローマジパンはシュトレンの生地にドライフルーツやナッツのように塊のまま入れられます。するとローマジパンの水分が少しずつ生地になじんでしっとりしていき、おいしくなっていくのです。
今回はクリスマスを感じるお菓子、シュトレンのお話でした。
今年はリッチな味わいと特別感あふれるシュトレンを毎日少しずつ召し上がって、変化する味を味わいながらクリスマスへの期待感を高めてみてはいかがでしょうか。
【参考文献・資料】
・『クリスマスの発酵菓子 シュトレン・パネットーネ・クグロフ ヨーロッパで愛され続けるその背景、魅力と作り方』(誠文堂新光社)
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