真っ白な生クリームと真っ赤なイチゴのコントラストが美しいショートケーキ。でも中のスポンジ生地も美味しさの名脇役ですよね。
そのスポンジ生地の美味しさに砂糖は甘い味以外でも役立っていました。
まずはショートケーキとは
ショートケーキはスポンジ生地にイチゴなどのフルーツと生クリームを組み合わせたケーキです。
誕生日やお祝いなど、いろいろな場面で食べられ、スポンジ生地の間と外側に生クリームとイチゴで綺麗にデコレーションされたものをよく見かけると思います。
ショートケーキの生地がサクサク?
ショートケーキはイギリスで誕生しました。
1602年に発表されたシェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」という作品に「ショートケーキ」という言葉がすでに登場しており、歴史のあるお菓子です。
しかし、ご存知かもしれませんが、イギリスと日本のショートケーキは同じものではなく、生地が違っています。
イギリスのショートケーキは生地部分にショートニングやラードなどが入っていて、スコーンのように外側がサクサクした食感です。
サクサクするという意味がある「Short」からショートケーキと名付けられたと言われています。
日本で進化を遂げたショートケーキ
それでは、ふわふわ食感の日本のショートケーキはどのように誕生したのでしょうか。
大正時代、渡米して洋菓子の研究をした後に横浜で洋菓子店を開いた日本人によって、現在のような日本独自のショートケーキは誕生しました。
どらやきやカステラなど、やわらかな食感を好む日本人に合わせて改良したと思われます。
砂糖でスポンジ生地は「ふわっ」、そして「しっとり」
その改良されたスポンジ生地の美味しさに砂糖は甘い味以外にも2つの効果で役立っています。
まず一つ目の効果は、スポンジ生地の弾力性を増しています。
砂糖は気泡の安定性を保つ性質があるため、生地に含めて混ぜることで、焼く前の生地の気泡をつぶれにくくさせて、焼いた後に弾力のあるスポンジ生地を作り出します。
二つ目の効果は焼いた後のスポンジ生地のしっとり感を長持ちさせます。
ショートケーキを食べると、スポンジ生地がしっとりと感じませんか?
焼いた後のスポンジ生地には、砂糖と水で作ったシロップが塗られます。スポンジ生地にシロップをしみこませることを製菓用語でアンビベといいますが、保水力をもつ砂糖が入ったシロップを含ませることで、ただの水をしみこませるよりも乾燥を防ぎしっとりとさせる効果をもたらしています。
(砂糖の保水性の高さにつきましては過去のコラム 「なめらかな食感に役立つ 砂糖の保水性」も見てくださいね)
砂糖のはたらきによって「ふわっ」、そして「しっとり」とした食感のスポンジ生地のショートケーキができあがるのです。
今回はショートケーキ、特に中のスポンジ生地のお話でした。
日本で進化した、ふんわりしたスポンジ生地をもつ日本式のショートケーキ、ぜひその歴史を感じながら召し上がってみてはいかがでしょうか。
【参考文献・資料】
『お菓子の由来物語』 猫井 登 著(幻冬舎)
『「菓子と砂糖のおいしい関係」(2) 』(独立行政法人 農畜産業振興機構)
https://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0405a.htm
『【特集】砂糖の効用を活かした料理』(独立行政法人 農畜産業振興機構)
https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001241.html
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