酵母ってなんだろう? ~糖を全く違うものに変える不思議な生き物~

2023.08.21 知識情報

酵母ってなんだろう? ~糖を全く違うものに変える不思議な生き物~

ブドウ糖発酵

食卓にならぶパンやワインは酵母によってできます。どうしてパンが膨らむか、ブドウがお酒になるかご存知でしょうか?
今回は「糖」を全く違う物質に変える酵母についてお話いたします。



酵母とは


酵母はブドウ糖などの「糖」を栄養にして「炭酸ガス(二酸化炭素)」と「アルコール」を出しながら増えていく生き物です。


酵母は花や果実、動物の表面など自然界のさまざまな場所で生息しています。
酵母として認められているのは、1,300種以上にもなりますが、食品に利用される酵母は数種のみで、パンやお酒づくりなどさまざまな食品の加工に使われています。


酵母ってなんだろう_挿入画像1_酵母の画像.jpg


たとえばパンづくりでは、パン生地に含まれる糖を酵母が食べて出す炭酸ガス (二酸化炭素)によって生地が膨らみ、一緒に出すアルコールによって香りがついて風味が良くなります。アルコール自体は焼いた時に消失します。


酵母ってなんだろう_挿入画像2_発酵過程.jpg


人間は酵母が出す炭酸ガスとアルコールを利用して、その他にもさまざまな食品をおいしく加工しています。



5000年以上前から人類は酵母を利用していました


人間と酵母の歴史はとても古く、紀元前3500年の古代メソポタミア文明の時代から利用してきたと言われています。

紀元前1400年頃に作られたと言われる古代エジプトのナクトの墓で発見された壁画には、ブドウを収穫する人、ブドウを踏みつぶしている人、壺にブドウ果汁を入れている人といったワインづくりの様子が描かれています。


酵母ってなんだろう_挿入画像3_ナクトの墓.jpg



美味しい食品を生みだす母のような存在


酵母という名前は 発酵のもとになる母ということでつけられました。パンやお酒のほかに味噌や醤油などのさまざまな食品をつくる際にも欠かせない存在です。


英語では酵母を泡が浮き上がるという意味の「イースト(Yeast)」と言います。
つぶしたブドウを容器に入れて置いておくだけで酵母がブドウの糖を食べてアルコールと一緒に炭酸ガスを出します。そうしてブドウの搾り汁が自然に泡立っていったことから、そう呼ばれるようになったと思われます。


酵母ってなんだろう_挿入画像4_ブドウが発酵している画像.jpg



食べ物以外にも酵母は活躍 ~ バイオエタノール ~


酵母が「糖」を「アルコールと炭酸ガス」に変える性質を利用して、トウモロコシやさとうきびの糖をアルコールに変え、石油代替燃料のバイオエタノールが生産されています。

このバイオエタノールは、砂糖生産量世界第1位のブラジルでは収穫したサトウキビの内、約半分だけを砂糖にして、残り約半分はバイオエタノールにするほど普及している燃料です。


酵母ってなんだろう_挿入画像5_サトウキビの画像.jpg


他にも、植物油から環境にやさしい界面活性剤が開発されているなど食品以外でも酵母は活躍しています。



今回は「糖」を「炭酸ガス(二酸化炭素)とアルコール」に変える酵母をご紹介しました。

昔からおいしいパンやワインづくりには酵母が活躍していました。これからも小さな生き物、酵母に感謝して発酵食品をおいしくいただきたいですね。



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