なめらかなくちどけで、黄金に光り輝くハチミツは、ミツバチが作り出した貴重な天然甘味料です。遥か遠い昔から身近にありました。
今回はそんなハチミツのお話です。
ハチミツの歴史
ハチミツと人類とのかかわりの歴史はとても古く、スペインのバレンシア地方にあるアラニア洞窟には、ハチミツを採取している様子が8000年ほど前に描かれた壁画に残っています。
そして、古代ギリシャ時代からローマ時代へとハチミツは食物的、文化的にも重要であり続け、死者や神々に捧げられるなど儀式にもたびたび登場しています。ギリシャ時代にはハチミツを「天国の一部が地上に落ちてきたもの」と表現するなど当時のハチミツに対する貴重さ、熱狂ぶりがうかがえます。
また、4000年ほど前のエジプトでは粘土板に象形文字で巣を表すものがあり、すでに蜂を飼育していたと考えられています。
ハチミツの原料、作り方
ハチミツはミツバチが集めた花の蜜が原料です。
働きバチは、外勤バチと内勤バチとに役割が分かれていて、外勤バチが花から花へと飛び回り、集めた花の蜜を胃のそばにある蜜嚢(みつのう)に溜めて巣に戻ります。巣に戻ると、待機していた内勤バチに口移しで蜜を渡します。
内勤バチは巣に運ばれた蜜を、羽を動かし続けるなどして水分を蒸発させます。約60%含まれていた水分を最終的には20%ほどにまで濃縮し、自ら分泌した蜜蝋(みつろう)で蓋をして保存します。
その後、人間が蜜の入っている巣板を巣から取り出し、遠心分離機により液状のハチミツと固形の蜜蝋とに分けて、ハチミツが出来上がります。
ハチミツの成分
ハチミツは20%ほどの水分の他は、ほとんどが果糖やブドウ糖などの糖類です。また微量ですがミネラルや有機酸も含まれています。
また、市販されているものでも1歳未満の子供には種類を問わずハチミツを与えてはいけません。ハチミツに含まれていることがあるボツリヌス菌は大人の腸内では他の腸内細菌との競争に負けるため増えず、通常は何も起こりません。しかし乳児の場合、腸内環境が整えられていないため腸内でボツリヌス菌が増えて毒素を出し、便秘や、ほ乳力の低下などの症状を引き起こす恐れがあるのです。
ハチミツのおいしさ
濃い旨みのある甘みとわずかな酸味は、どのハチミツにも共通し、そこに花の種類によりそれぞれの複雑な風味が加わります。
日本で養蜂に使われるミツバチには「セイヨウミツバチ」と「ニホンミツバチ」の2種類がいます。
セイヨウミツバチは1種類の花の蜜を集中して採る習性があり、単花蜜(たんかみつ)を作ることができます。一方、ニホンミツバチは、さまざまな花から蜜を集め、百花蜜(ひゃっかみつ)を作ります。
単花蜜といっても100%その花だけという訳ではないようですが、味や香りなどその花独特の風味を楽しめます。例えば「そばの花」は黒蜜のようなコクで力強い花の香り、「くりの花」は甘い栗の香りが広がり、ほろ苦い風味がします。
砂糖のかわりに使うと?
ハチミツは砂糖よりも吸湿性が高いため、パンやケーキに加えるとしっとりします。また、ハチミツは肉などタンパク質と一緒に加熱した際、メイラード反応が強く出て褐色になりやすいです。これらは果糖などが多く含まれているためです。
もちろん、ハチミツ自体に水分が含まれているため、お菓子作りなどではレシピの水分量に注意が必要です。
そして、砂糖もハチミツも天然の甘味料ですが、ハチミツなら原料の花由来の風味や味を料理に使っても感じられると思います。
今回はそんな自然を感じられる甘味料、ハチミツのお話しでした。
みなさんもぜひお好みのハチミツを見つけてみてはいかがでしょうか。
参考文献
・『マギーキッチンサイエンス』(共立出版)
・厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html