乳糖は人間や牛など哺乳類の乳だけに含まれている糖です。
なぜ乳に乳糖が含まれているのでしょうか?
大人に乳糖不耐症の人がいるのはなぜでしょうか?
それらには理由がありました。今回はそんな乳糖についてのお話しです。
乳糖ってどんなもの?
乳糖(ラクトース)とは母乳や牛乳に含まれる糖類で、2つの糖「ブドウ糖(グルコース)」分子と「ガラクトース」分子が結合してできています。甘味度は(ショ糖と比較して)0.15~0.4と甘さ控えめです。母乳には7%ほど、牛乳には4.5%ほどが含まれています。
乳糖を構成する分子の「ブドウ糖」と「ガラクトース」って?
「ブドウ糖」は自然界に一番多く存在する糖でほとんどの生物にとっての基本的なエネルギー源です。(詳しくは過去のコラム「ブドウ糖ってどんなもの?」「ブドウ糖ってどんなもの?」を見てくださいね)
「ガラクトース」もブドウ糖とほぼ同じ構造をしていますが、一部分だけが違う構造になっていて体内で特殊な用途に使われる糖です。
ガラクトースは脳など神経系の組織を構成するのに必要な栄養素なのです。
通常、成人では体内でブドウ糖から必要な分のガラクトースが生成されます。しかし乳児期にはブドウ糖からガラクトースへの変換がうまくできないため、脳・神経系の発達のため、乳に乳糖として含まれ、外から与えられていると考えられています。(※)
また、ガラクトースは肝臓でブドウ糖に変わりますので純粋なエネルギー源としても利用されます。
乳糖不耐症とは?
乳糖は小腸で消化酵素の「ラクターゼ」によって、ブドウ糖とガラクトースに分解されて吸収されます。
そのため消化酵素のラクターゼが少ないと乳糖を分解できません。乳糖のままでは体内に吸収できないため、腸内の濃度が上がり浸透圧の影響で水分が体内から腸内に出てきます。その結果、便がやわらかく、時には下痢やおなかがゴロゴロしたりします。それらを乳糖不耐症といいます。
この乳糖を分解する消化酵素のラクターゼの腸内分泌量は、母乳を飲む生後まもない時が最大で、成長するにつれ徐々に減っていくのです。母乳を飲まなくなることで乳糖を分解する酵素が不要になるからだと考えられます。そのため大人に乳糖不耐症の人が多くみられます。
(昔から日常的に牛乳やヤギのミルクを飲んでいた北欧の人は大人でもラクターゼの分泌量が多いままのようです)
腸内環境の改善で乳糖不耐症も軽減
乳糖不耐症にも腸内環境の改善が効果的なのが分かっています。
腸内に棲むビフィズス菌などにより乳糖が食べられ分解されることで、乳糖不耐症の不快な症状が表れにくくなります。
また、そのことによりビフィズス菌が有機酸を生成し、さらに腸内環境が良くなると考えられます。有機酸により牛乳に含まれるカルシウムの吸収も促進されますので、その点からもまずは腸内環境を整えることはお勧めできます。
今回は母乳や牛乳に含まれる「乳糖」についてお話いたしました。これからも糖に関係する話題を取り上げますので、これからも見てくださいね。
※ 参考文献『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)より