有平糖という砂糖菓子をご存知でしょうか。
もしかすると名前にはあまり馴染みがないという方が多いかもしれませんが、日本で初めて食べられた"砂糖から作られたキャンディー"が有平糖であると言われています。
近年「食べる宝石」として琥珀糖が注目されていますが、有平糖は「元祖食べる宝石」とも言える美しい伝統的な和菓子です。
有平糖ってどんなもの
有平糖は、室町時代に宣教師の手によって日本にやってきた砂糖菓子アルフェニンやアルフェロアがルーツとされる「飴菓子」です。
アルフェニンは現在もポルトガルの一部の島で食べられており、砂糖と水に酢を加え熱して作る花や動物をかたどった白い飴菓子です。
これらの砂糖菓子が南蛮貿易によって伝わると、砂糖に水と日本古来の甘味料である水飴を加えて一緒に煮詰めて固める製法が開発され、日本の有平糖が誕生しました。
ちなみに、この時代に南蛮菓子や砂糖が輸入品として入ってくるまで日本において「飴」と呼ばれていたのはツタ植物の蜜やもち米を原料とする液状の甘味料「水飴」のことでした。
現在私たちが口にしているベッコウ飴などのいわゆる固さのある飴玉の原型は、この時に有平糖として生み出されたのです。
砂糖は日本に入ってきて長い間、高貴な人だけが口にできる、とても貴重な食品だったため、そこからつくられるお菓子もとても貴重なものでした。
砂糖を多く使う有平糖は茶の湯文化と共に進化を遂げ、鮮やかな色や繊細な模様など美しい細工が施されます。
江戸時代の最高峰の職人が作った花を模した有平糖には、本物と見間違えるほどの精巧さから蝶がとまったという逸話が残されているほどでした。
現代の有平糖
茶菓子として使われる有平糖は、四季の移ろいに合わせた花や情景が表現された有平細工と呼ばれる繊細なものですが、有平糖にもさまざまな種類があり、和菓子屋さんやお土産屋さん、スーパーなど身近な場所でも見つけることができます。
ツヤツヤとした見た目や上品な味わい、華やかな色や模様がついた日本の伝統的な有平糖は見ているだけでも美しく、海外の方にもお土産品として人気です。
南蛮から伝わり日本で進化した美しい宝石のような有平糖。
今度ぜひ目と舌で味わってみてはいかがでしょうか。